Love Eater Ⅲ
ああ、徐々に周りが明るんできている。
耳にも少しずつ当たり前の雑音を取り込んで。
足音が近づいて来ている。
静かでゆったりとした。
それと一緒に甘ったるい…煙管の匂い。
これは…、
っ…百夜だっ!
そんな結論に至るや否やソルトの体が覚醒に走るのは実に俊敏な事であった。
目蓋を開くより早く手足が動き、腹部に鋭く振り下ろされかけていた拳を寸でのところで防いだのだ。
そうして無理矢理光に慣らした双眸でひと睨みしたのは当然、
「そう何度も同じ手を食うかっ、」
前科が記憶に新しく、今もまったく悪びれた様子のない百夜の姿。
「何度も人の寝込みをグーパンで襲おうとすんじゃねえよ」
「いやあ、呑気な寝顔を見てたらついね。僕の中から気配が消えたのにいつまでも起きないもんだから」
「だからって起こし方ってもんがあるだろ!?しかも病み上がりなとこ色々頑張ってやってるだろうが俺っ!呑気いうなやっ!」
「で?その頑張った分成果は得たんだよね?一応、六花の消滅の呪いは止まったみたいだけど」
「はっ?目覚めてねえのかよ?」
「目覚めてないねえ。今もずっと眠り姫状態だよ」
見ての通りとばかり、示された六花は先程と変わりなくソファの上で目蓋を下ろして動きはない。