Love Eater Ⅲ



「おらっ、耳かっぽじってよく聞きやがれよ!お前はっ…」

「ソルトぉぉぉっ!!!!」

「うっ…!!」

まさに今から説教だ!と言う勢いでズカズカと六花に距離を詰めたのだったが、次の瞬間には飛び込んできた六花の勢いの餌食となり敢え無く床に沈む事になる。

それでも、負けて堪るかと憤りを再燃させ叱責に口を開きかけた瞬間。

「ソルトソルトソルトぉぉぉ!ソルトだあっ!生きてるっ!ここにいるっ!僕の傍にいるっ!!」

「っ…あったりまえだろ!俺はなあ、」

「嫌だよっ!嫌だ嫌だ嫌だっ!」

「おいっ、話を…」

「居なくなっちゃ嫌だっ!居なくならないでっ、消えないでっ、僕の傍に……っ…僕を一人ぼっちにしないでよぉぉぉっ!」

「っ……」

「うわぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

流石に、ソルトの憤りも勢い負けだ。

六花の小さな体から吐き出される畏怖と悲哀の叫び声には。

この小さな体のどこから湧いた力であるのか。

ソルトを掴んだ腕はこれでもかと震えきっているにも関わらず、離したら消えてしまうのではといわんばかりに強固な力を見せている。

そして泣きじゃくる様はまさに小さな子供の如く。

まるで迷子であった子供がようやく親を見つけ縋りつくままに。

そんな姿にソルトであっても憤りの感情を押し通すなど出来る筈もない。

嫌だってなんだよ。

居なくならないでって。

消えないでって。

一人にするなって…、

そんなの全部、

「……アホ。それは全部こっちのセリフだっつうの」

弾かれた言葉にはさっきまでの勢いも憤りも皆無。

寧ろ脱力しきったその声音はようやく張り詰めていた緊張が途切れた安堵に満ちた物。

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