Love Eater Ⅲ
そんな百夜の感情を読み取るかのよう。
悲しげに微笑む花鳥もまた決して交わらぬ感情を静かに口にし始めるのだ。
『もっともっと、伝えたい事は沢山あるの。だけど今はそんな話をしている時間がない。この呪いが発動したという事はこの子が生への執着を手放してしまったという事。自分の存在に価値がないと絶望してしまったという事。今は私の呪いが重複している事でこの子の呪いの進行を留めているでしょうが……この子は消滅するわ、24時間以内には』
この状態の維持はただの一時凌ぎ。
決して六花の崩壊が食い止められたわけではない。
それを告げられれば感傷に浸っていた心も正気に戻るというもの。
百夜も時雨も目指す目的は違えど六花の崩壊など望んでいないのだ。
当然時間まで判明した今どうにか阻む策はないかと思考が働き始めたのだが、それをするより早く。
『でも、この子の呪いを打ち破れる方法が一つあるわ』
そんな花鳥の一言が響いてくる。
それには当然二人の意識は花鳥の次なる言葉に集中したというのに。
『たった一つ。たった1人。打ち破れる人がいるかもしれない。きっと、この場にもいる筈。…居てほしい』
「っ……」
「それは……」
『この子の生への要が、生きたいと思わせてくれる確かな愛情を注いでくれる相手が。私の百夜のような…』
綴られる花鳥の言葉に次第に百夜も時雨も言葉を失い希望の灯火も淡くなる。
救いがあるようで無い花鳥の呪いはとけぬものだと既にわかってしまっているから。