Love Eater Ⅲ
六花の全てはソルト。
それは実の生みの親の存在よりも絶対で揺るぐことのない六花の理。
それによって身を滅ぼしかけた程なのである。
そんな六花の愛情や執着を一心に受けているという事実は当然ソルトも感極まることではあるのだが。
それでも実の父親の百夜の手前、六花が自分の方に情を置く事には申し訳なさも募って素直に喜べずに葛藤してしまう。
結果、言葉ならない苦悶の感情を口内で転がしてしまっていれば。
「でも……生んでくれたことには感謝してる」
「……え?」
「両親に。……だって、さすがにそればっかりは僕の意志でもソルトの意志でもない。僕の両親の意志。そうして生み落としてくれたからソルトに会えたんだもん」
「六花……」
「だから……ありがとうね?」
不意にぽつりぽつりと補足され始めた六花の心情。
最初こそその言葉のベクトルはソルトの方へ。
それでも言葉が進むうちに緩やかに相手は切り替えられ、最後に発せられた一言は百夜に向かって。
父親らしいことなどした覚えもなければ今更父親ぶるつもりもなかった百夜だ。
だから今も自分を気にして一人複雑に葛藤するソルトに対しても『気にせずともよいのに』と小さく失笑していたくらいであったのに。
不意に向けられた思ってもみなかった六花の言葉には意表を突かれて呆けてしまう。