文の幸福
これには確信があった。
私が稽古で通っていた警察署でおじさんたちが愚痴っていたのだ、
防衛庁にハッキングを試みた青年の身柄確保を防衛庁の要請で動いたのに、
全貌をすべてどこかの機関が持っていくのだと。
身柄引き渡しのその時にたまたま、見かけたのが仁の父親だ。
あれだけの機関だ、情報操作は簡単だろう、
華の家族は権力に弱いからぶり返す事はしないだろうし。
ただ、誤算は仁だ。
私は仁に恋をした。
仁は人を見下す人間。
だけど、誰でも見下すのだ。
相手が赤ちゃんであろうと、老人であろうと、相手が権力者であろうと。
図書館での対応とパーティーでの対応が全然変わらない。
ある意味、身内以外には絶対的の平等主義者だ。
すべての人に平等にできる人間は見たことがない、しかも根拠もないのだから仁の人間性だ。