文の幸福

「お邪魔します。」

と彼女が玄関に入ってくる。

靴が濡れてしまったらしく、靴下を脱いで自前のタオルで拭いていた。

今時の女子高生っていつもタオル持ち歩いてんのか?

「大谷さん、図々しく申し訳ないですが、足を洗いたいです。
お風呂場借りていいですか?」

「いいよ、そこ右」

お礼をいいつつ、お風呂場に向かう文ちゃんをみていた、

嘘です。かかとをみていた。

文ちゃんが靴下を脱いだ瞬間からあの白いかかとにくぎ付けだ。念仏も吹っ飛んでしまった。


初めての衝動に混乱しながら、風呂場から出きた文ちゃんをみて色んな焦りがでてくる。

自分の様子がおかしい。いつもの冷静冷着の自分じゃなくなっている。

認めたくはないが、一目ぼれにしろ、興味にしろ何かしら手を打たないと、
前の自分を取り戻せない。

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