文の幸福

ふと視線をやると壁に半分身を潜める、田中のジジー。

コッチにこい!と視線をやるが、怯えて出てこない。

しかたないので、なるべく穏やかな声で田中のジジーに声をかける。

「田中さん、返却の設定触りましたか?」

「・・・はい、朝、34冊の返却を済ませたかったので。」

「限度は100冊にしてありますので、100冊以下は設定を変えなくてもスムーズにいけます。
他の設定がクルってしまうと、棚卸が合わず、また半年かけて一冊一冊調べる事になってしまうので、どうかココも他も設定を変えないで欲しいです。
困った事があれば、必ずオレに言ってください。
できる事はやりますので」

となるべく丁寧に半分壁の田中ジジーに諭した。

ジジーは「ありがたや、ありがたや」と壁の中に消えて行った。

妖怪壁隠れジジー。

< 87 / 225 >

この作品をシェア

pagetop