推しが私に噛みつきました。



守賀先輩、という単語を聞けば、私たち1年生にも……守賀啓人さんの名前が浮かびます。



3年生の、かっこいい先輩。私の目の保養。



目の保養っていうと、顔だけだけど……本当に、顔しか知らないのです。



遠巻きから眺めては、切れ長の目の下にあるホクロの色気と、浮き出た手の甲の血管や筋に、ため息をつく。それしかできません。



だけど、それでも……先輩は、私の“推し”なのです。



この学校でいちばんかっこいいのは、守賀先輩だと思っています。


いちばん、高校3年生らしくないのは、彼だ、と。



『先輩』



いつか、そうやって呼んでみたいなとは思うのですが……話す機会も、ましてや目が合ったこともなく、きっとこれからもないであろう私には……到底ムリな話なのです。
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