彼、
午前7時51分。
彼は目を覚ました。
「おはようございます。」
人間の言葉で喋った彼は、
やはり人間の建物で生活していた時よりも
生き生きしていた。
が、元からの生存願望が低いため、
今、通常の人間と同じになったというべきだろうか。
元居た場所で捜索が始まろうとしているのは知る由もなく、彼は水場を探すため歩き始めた。
水のあるところには必ず、
生物が集まるのでそこにたどり着くのは難しくはない。
何かが通った跡を辿れば水場に付くことも多々ある。
水場にたどり着いた彼は、
「こんにちは。
僕は皆さんに敵対心はありません。
食べようとも思いません。
皆さんが私を食べようと思うのなら、
是非お召し上がりください。
味の保証はできません。」
そう言った。
澄んだ水に手を伸ばし、
「ありがとうございます。」
とまた何かに話しかけ、
そして水を飲んだ。
彼は昨日草をぬいたところに帰ろうとしていた。
すると熊が現れ彼の横を素通りしていった。
「いらないのですね。」
そういうと彼は少し哀しそうな顔をした。
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