愛され女子になりたくて
side 青山
トイレに行こうとした青山は、ふと聞こえた会話に足を止めた。
「カナ、青山さんが好きでしょ?」
ん、俺の話?
「・・・どうして?」
秘書課の安井さんと、もう一人は佐藤さんか・・・。
「いつもはさ、モカが居るからこの話題は避けて来たけどね。カナはわかりやすい!」
そういや、萌香ちゃんと佐藤さん仲良かったんだよな・・・。
「モカはさ、天然で鈍いから気付いてないけど?祥子さんの目は誤魔化せないよ」
「・・・優しいから。かな・・・」
「優しいなら、あんなに分かりやすくモカに迫る?周囲に丸分かりじゃん。私は青山さんより中野さんのが、カナに優しいと思うよ」
やっぱり、俺わかりやすいよな・・・。
中野さん、初めっから佐藤さん狙ってるからな。
何か、モヤモヤする。
「確かに、中野さんは優しいよ。中野さんから青山さんに上司が変わって、私は何度も助けて貰ったし、仕事だって教わる事も多いのよ。青山さんの優しさは、他の人には解りにくいかもだね・・・でも、私は優しい、って思ったんだよ」
佐藤さん、俺をそんな風には評価してくれてたんだ。
「ふうん、そんなもんかねぇ。でさ、告らないの?」
・・・えっ?
「ううん。青山さんの好意は、モカちゃんに向いてるし、私は見てるだけで・・・。青山さんとどうにかなりたいなんて、思ってないよ。青山さんが幸せで、私に笑いかけてくれるだけでいいんだよ」
・・・。
「・・・難儀な性格だね、カナは。あんたかなり人気有るのにさ。開発部とか、マーケティング部のヤツらなんかにさ。不毛な恋してないで、他にも目、向ければイイのに」
こんな所で立ち聞きなんて、俺何やってるんだろ。
とりあえず、トイレだ。
用を足して、手を洗いながら・・・顔を上げると鏡に映る自分の顔を見るとはなしに、先程の二人の話が甦る。
「青山さんとどうにかなりたいなんて、思ってないよ・・・」
「あんたかなり人気有るのにさ。開発部とかマーケティング部とか・・・」
・・・大人しくて控えめな彼女は、入社した時から人気があった。派手めな安井さんと、天然の萌香ちゃんの影に霞んでいるけど、見る目のあるヤツらは確かに居る。
教育係になった中野さんも、かなりのヤツらに妬っかまれてたっけ。
俺は、どうしたいのかな?
萌香ちゃんを好きになった。
でも、佐藤さんも気になってる。
俺は、こんなに気の多い奴・・・だったんだろうか?