愛され女子になりたくて
いつもの時間通りに駅に着くと、ホームに青山さんを見かけた。
「青山さん、おはようございます」
「佐藤さん、おはよう」
「昨夜は送って頂いて、ありがとうございました」
「ん、気にしなくて良いよ。同期会の時は、いつも姉貴を送っているから」
「うわ、そうなんですか?いつも姉がご迷惑かけて、済みません」
「佐藤さんは、謝ってばかりだな。君が悪い事してるわけじゃないし、済みませんなんで言わなくても良いよ」
「はい・・・」
丁度電車が来たので、乗り込んだ。
今日の電車は、いつになく混雑していた。
「佐藤さん、大丈夫?」
「はい、・・・何とか」
「ヤバかったら、俺に捕まっていいからね」
「はい」
たった三駅だけど、なるべく私に圧がかからないように、気を使ってもらった。
「佐藤さん、潰れてない?」
「青山さんが守ってくれたので、潰れませんでしたよ」
「それは良かった。じゃ、行こうか」
「はい」
営業部のフロアに着くと、バッグをデスクに仕舞い、給湯室に行く。
残業した人が使ったカップや珈琲メーカーなどの洗い物をチャチャッと済ませ、布巾を用意すると、デスクを拭いて回る。
一通り済むと、洗い物の後にセットしておいた珈琲が出来上がって、淹れたての珈琲の香りが元気をくれた。
「美味そうな香りがする。珈琲淹れたの?」
青山さんが給湯室に顔を出した。
「はい。飲みますか?」
「頼める?」
「デスクに持って行きますよ」
「そう?じゃ、お願いするよ」
びっくりした。
イキナリだったから、変な声出そうになっちゃった。
「青山さん、どうぞ」
「ありがとう」
香りを嗅いで、一口口に含んだ。
「ん、美味い」
「良かった。モカちゃんに美味しい珈琲の淹れ方を、教わったんです」
「都築さんに?・・・そうなんだ」
青山さんは、眉間に皺を寄せると・・・何か考えているようなので、自分の分の珈琲を持ってデスクに戻った。