愛され女子になりたくて
side 青山
エレベーターを待つのももどかしく、駆け足で階段を登って総務に行くと、萌香ちゃんが桜葉部長や社長秘書の月野(つきの)さん、安井に囲まれていた。

「萌香ちゃん、結婚するってホント?」

いつもなら都築さんって言ってたのに、頭の中がそのまま言葉になった。

「青山さん・・・」

息を切らせて、無理矢理輪に入る。

「相手は俺だが、今日は内勤なのか?青山」

「え?桜葉部長と?いつの間に・・・」

「残念だったわね、青山くん。モカちゃんと裕一は、幼い頃からの付き合いなのよ」

月野さんにドS女王バリにバッサリと、一刀両断にされる。

安井が俺を、グイグイと押しやる。

「と、言うことなんで、青山さんは営業にお出かけくださいね。カナが焦ってますよ」

振り向くと、ゼイゼイと息を切らせた佐藤さんが、俺のビジネスバッグを持って追いかけて来てた。

「青山さん、アポ先、間に合わなくなりますよ!急いで下さい。あっ、萌香ちゃんおめでとうお祝いはまた、ゆっくりね!ちょっと、青山さん!早く!!」

有無を言わさず、エレベーターに押し込む。

「必要そうな物は一通り、この中に入れて有ります。ショックなのはわかりますが、お仕事です!しっかりして下さい!」

この時、俺は初めて佐藤さんを、まともに見た気がした。

いつも大人しく、控えめで。
でも、キッチリ仕事はやり遂げる。
そして丁寧で正確。
何より、俺のペースに合わせて、的確なサポートをしてくれる。

正しく、目から鱗を体験した。

エレベーターが一階に着くと、両手で顔を叩いて気合を入れた。
佐藤さんからビジネスバッグを受け取ると、

「ゴメン、ありがとう。行ってくる!」

と言って、駆け出した。

「はい!」

佐藤さんの元気の良い返事が、背中を押してくれる。


< 18 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop