愛され女子になりたくて
離れる予兆

一階のロビーで、力尽きた私は膝がガクガクでへたり込んだ。

ヒールなんかで、階段を駆け上がるとは思わなかったし・・・。
髪を振り乱してへたり込む私を、皆が遠巻きに見てる。
恥ずかしくて、移動したいけど・・・足が言うことを聞いてくれない。

「大丈夫か?ハナ」

中野さんが手を掴んで、立ち上がらせてくれた。

「済みません」

「ハナ?こういう時は、ありがとうだぞ」

そう言って、デコピンされた。

「・・・痛いです・・・」

「お前、俺の一番最初の教えが、なってないな。だから、青山なんかに渡したくなかったんだよ」

「中野さん?」

「ここに居ると見世物になりそうだ、営業部戻るぞ」

「はい」

エレベーターを降りて、化粧室に寄らせてもらった。
手ぐしで髪を整えて、シュシュを留め直して化粧室を出ると、中野さんが壁に凭れて待っていた。

「ハナ、二課に異動しないか?」

「えっ?どういう事ですか?」

「前々から部長に、打診してたんだよ。俺はまだ、お前に教えきれてない事がある。それに、お前程、俺のサポートを任せられる奴が居ないんだよ、二課にはさ・・・」

「・・・」

「ハッキリ言えば、青山はサポートはいらないんだ。アイツは化け物バリのスーパーマンだからな」

「・・・そうですね。私は必要無いんですね・・・一課には・・・」

「俺にはハナが、必要なんだ」

「・・・少し、考えても良いですか?」

「・・・ああ。良い返事を期待してるよ・・・」

中野さんは、先にフロアに帰って行った。

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