愛され女子になりたくて
side 青山
佐藤さんが二課に異動して、早くも二週間が過ぎた。
早くも営業が回り始めたようで、成績もジリジリとだが、上向き始めた。
二課の方から楽しげな会話が聞こえたり、どことなく活気が出てきたようだ。
一課にいた時は淡々と仕事をこなしていた佐藤さんだったけど、二課ではクルクルと良く動き、後輩二人の指導も順調のようで、時折眩しい位の笑顔が見える。
そんな時に、姉の方の佐藤が倒れた。
どこからかの内線電話を取った佐藤さんが、血相を変えて駆け出して行った。
何かあったらしく、いつもの佐藤さんらしくない雰囲気に、俺は後を追っていた。
総務部にある救護室の前で、佐藤さんが東海林課長に喰ってかかっていた。
「どうして、姉が倒れたんですか?東海林課長、姉に何かしたんですか?週末から様子がおかしいし、今朝は会社に行きたくないって言ってた!」
「すまん。俺のせいだ・・・」
「ああ見えて、姉は人一倍気に病む性格なんです!姉に何かあったら、東海林課長を一生恨みますよ」
「・・・」
項垂れてる東海林課長も、取り乱している佐藤さんも、初めて見た。
どうやら、佐藤が倒れたらしい。
ふと、救護室から産業医の医師が顔を覗かせているので、俺は佐藤さんの肩に手を置いて落ち着かせ、医師に向かって聞いた。
「済みません、どうですか?」
「妹さんなんだね?お姉さんは貧血で倒れただけだから、大丈夫だよ。寝不足だったみたいだから、今は静かに寝かせといてね」
「・・・はい。わかりました・・・」
医師の話で安心したのか、佐藤さんが落ち着いてきた。
「上司の方、少しお話をききたいのですが、場所を変わっても?」
「はい。では、こちらに」
そう言って、医師と二人で打ち合わせブースに移動して行った。