愛され女子になりたくて
急展開
駅を出た所の不動産屋の前、表に掲示されてる物件カードを見る。
「駅近、オートロック・・・やっぱり、家賃高いな・・・」
「部屋、探してるの?」
「えっ?青山さん!」
「うん。で?佐藤と暮らしてるのに、なんで部屋探してるの?」
「あ~、えっと・・・近々姉が結婚する事になりまして・・・」
「佐藤が?誰と?」
「東海林部長・・・ですが・・・」
「はっ?東海林さんと・・・マジか~」
「一人で今の部屋は広いし、家賃が高いので・・・手頃な部屋をさがしてるんです」
ここで青山さんと会うなんて・・・。
なんだか、罰ゲームみたい。
「・・・そうか・・・なぁ、佐藤さん、ウチにおいでよ。部屋有るし」
「へっ?どうしてですか?」
「帰りは送って行くから、今から見に行こうか!」
そう言って、青山さんは私の手を引き、ドンドン歩き出す。
私は青山さんに小走りで着いていくしかなかった。
「ここだよ」
そう言われたのは、ウチの部屋からも見えてたマンション。
オートロックを開けて、ホテルのエントランスの様なロビーを抜ける。
正面のエレベーターに乗り、上から数えた方が早い十階のボタンが押される。
一番奥の部屋に着くと、カードキーを開けて入る。
「どうぞ。とりあえず、リビングに行くよ」
「はい。お邪魔します・・・」
玄関に入ってやっと、手を離してもらった。
「うわ、スゴい!」
リビングに入ると、目の前に夜景が広がっている。
思わず立ちすくんでいると、再び手を引かれて、アイボリーのソファーに座らされた。
「案内する前に、ちょっと着替えて来るよ」
「はい・・・」
ちょっと、言葉が出てこない。
呆然としている間に、青山さんは着替えに部屋へ入ったらしい。
私は落ちつかなげに、キョロキョロと周囲を見廻す。
ダイニングは、オシャレなテーブル。
キッチンはアイランド型で、使っていないのか、キレイに片付いている。
リビングには、54型のたぶん、HDD内臓型4Kテレビ。
一通りぐるりと見たところ、かなりお金のかかっている部屋だ。
「お待たせ、今俺が出入りした所が主寝室なんだけど、反対側のこの部屋は空き部屋なんだ」
「うわ、広い」
クローゼット付きの、八畳の洋間がガランと空いている。
「佐藤さん、どう?この部屋良ければ貸すけど?内鍵も付いてるし。家賃はタダでいい」
「どういう事ですか?」
「ここは俺の持ち家。賃貸じゃ無いから、家賃は無いんだよ」
ポカーンとした顔をしているかも、私。
「学生時代にデイトレードで儲けて、それを元手に資産運用してたから。一括で買ったんだ。一人暮らしは気楽なんだけど、やっぱりウチでゆっくり飯食いたいんだよね。でも、俺、料理は壊滅的にダメでさ・・・」
「前半のエピソードは、スゴいですけど。後半は、びっくりです。青山さん何でも卒無く出来そうなイメージだったんで・・・」
「幻滅した?」
「いいえ。寧ろ、親近感湧きました」
「考えてみてくれないかな?」
急いで決めても失敗したら、次っていう訳にもいかないよね・・・。
少しでも青山さんの役に立てるなら、断る理由は、ないよね・・・?
「ちゃんとした部屋を借りるまでで、良ければ・・・お部屋貸して頂けますか?」
「わかった。それまででも、良いよ。但し、俺が納得する部屋が見つかるまでは、居てもらうよ」
「一緒に探して、もらえるんですか?」
「女の子の一人暮らしなんて、最近はアブナイからね。男の目線で、チェックしてあげるよ」
「はい。宜しくお願いします」
「いつ、引っ越してくる?俺は何時でも良いよ。必要なら、クルマも出すし」
「姉にも話をしないといけないし、荷造りも有るので・・・来週末でも大丈夫ですか?」
「わかったよ。そうと決まれば、送って行こうか。途中で何か食べよう。腹、減ったよね?」
「はい。ペコペコです」
「詳しいことは、食べながら話そう」
「はい」