愛され女子になりたくて

始まりの朝

心地よい眠りが覚醒しはじめて、薄らと目を開けると、すうすうと寝息を立てて上下する健吾さんの胸が目の前にあった。

びっくりしたけど、声を上げるのははばかられる。
昨夜、抱きしめられたまま眠ってしまったらしい。

健吾さんを起こさないように、慎重に腕の中から抜け出すと、遮光カーテンの隙間から幾らか柔らかい光が薄らと見える。
そっと部屋を出て、リビングに入ると壁掛け時計が８時を過ぎた所だった。

よくよく考えれば、いつも以上に熟睡できた気がする。
よく眠れたからか、身体が驚くほど軽い。
とりあえず、顔を洗ってきがえを済ませてしまおう。
１０時には業者がくるし、朝食も用意しないと。

手早く作業と買い物の事を考慮に入れて、ターコイズブルーのカットソーと、ブルーのスキニージーンズに着替え、家事をする時にいつも付ける赤のエプロンをする。
出かける前にエプロンを外して薄手のオフホワイトのパーカーを羽織れば十分だろう。

昨日洗っておいたタッパー等を片付け、冷蔵庫を物色する。
料理は壊滅的にダメ･･･というだけあって、食材と呼べそうなものは、ヨーグルトとマーガリン、チーズ位しかない。

確かすぐ近くにコンビニがあったのを思い出し、買いに行こうかと思ったが･･･鍵がない事に気がついた。

もう少ししたら、健吾さんを起こして鍵を借りよう。
とりあえず、珈琲だけでも淹れておく事にする。

珈琲の香りが漂い出したところで、部屋から慌てて健吾さんが出てきた。