愛され女子になりたくて
食卓のブロポーズ
「健吾さん今朝ね・・・」
あらかた食事が終わったところを見計らって
今朝の浅井さん達との経緯を説明し、姉たちに共有した件も伝えた。
「わかった。そういうことも、あるよな・・・そこまでは、考えが及んでなかった」
「うん」
不意に、健吾さんに左手を取られた。
「健吾さん?」
「花菜美、このまま何でもないフリするのもいいけど、・・・俺と、結婚しないか?」
「イキナリ、どうしたの?」
衝撃発言に、心臓がバクンと跳ねる。
「不動産屋の前で花菜美を見つけて、一気にここまで来たけどさ・・・俺はこのまま、花菜美と一緒に暮らしたい。部屋なんてみつからないで、ずっとここにいて欲しいって・・・思ってる」
「だからって、結婚する事にするの?私の事好きでも無いのに?」
「花菜美はこの間まで、俺が都築さんに粉かけてたのも知ってるから・・・信じられないかも知れないけど、俺は花菜美が好きだよ」
「そんな事・・・嘘だよ・・・私はモカちゃんと違って可愛くもないし・・・」
「俺は、花菜美を可愛いと思ってるよ。初日に同じベッドで寝て、理性を総動員して我慢する位に、毎朝の中野さんとの些細なやり取りに嫉妬する程・・・花菜美が、愛しいと思ってる」
「健吾さん・・・」
「自覚したのは都築さんの結婚を知って、呆然としてる俺を花菜美が叱咤してくれた時・・・なんだけどさ。いつの間にか、なくてはならない、いつの間にか・・・そんな存在に花菜美がなってたんだ」
「・・・・・・・・・。私は、健吾さんが好きです」
「うん。知ってたよ」
「どうして?」
「同期会の夜、安井さんとの会話が偶然聞こえたんだ」
「ええっ!ヤダ・・・恥ずかしい・・・今、凄い勇気出して言ったのに・・・」
「花菜美を女性として、意識しだしたのはそれから。ただ、俺を想ってるだけで良いと言った花菜美の声が、俺の心にスっと入ってきた。でも、それが嫌じゃ無かったんだ」
健吾さんが真剣に話してくれるので、恥ずかしいけど、そのまま聞いた。
「今まで、女性の方から気持ちを押し付けられる一方だったから・・・ただ好きでいるって、赤の他人にキッパリ宣言する子は凄く新鮮で・・・凄く気になった」
「・・・・・・」
「中野さんと仲良さそうにしているのを、傍から見ててモヤモヤしたり、東海林さんに喰ってかかって涙目になってるのを見て、放っておけなかった。この部屋で楽しそうに料理をしてる花菜美を見て、都築さんの時には思い描けなかった未来が、すんなり思い描けたし」
「・・・・・・」
「花菜美、俺と家族になって欲しい」
声を出したいのに、いつの間にか流れた涙で嗚咽しか出ない。
「泣くなよ・・・」
いつの間に移動したのか、健吾さんに抱きしめられた。
「返事は貰える?」