愛され女子になりたくて
ネタばらしと挨拶

翌日、会社帰りに姉と東海林部長と落ち合った。

東海林部長に連れてこられたのは、和風の小料理屋。
臙脂の暖簾に白抜きで「なごみ」と書かれた落ち着いた店だった。
姉も何度か来ているらしく、お店のご夫婦と親しげに挨拶している。
そう思っていたら、東海林部長のお兄さん夫婦のお店だった。

「ヤダ、穂花ちゃんの妹さんなの?姉妹揃って美人さんなのね~。ゆっくりしてってね!」

しっとり系の人だと思った奥さんの琴子(ことこ)さんは、実はサバサバした気風の良い人だった。
部長のお兄さん、智(さとし)さんは、部長と違って職人気質というか、寡黙な人。
ご夫婦でバランスが取れているんだなぁと、思った。

「で、二人で雁首揃えてどうした?」

奥のお座敷に腰を落ち着けると、早速東海林部長が水を向けた。

「実は、折り入ってお願いしたい事がありまして・・・」

健吾さんが話し始める。

「昨日の一件で、覚悟が決まったというか・・・花菜美と結婚する事にしました」

「ちょっと、青山!イキナリ過ぎでしょ?」

姉が身を乗り出すのを、東海林部長が苦笑しながら手で制す。

「まぁ、俺は時間の問題だと思ってたよ。花菜美ちゃんはわかりやすいし、青山も・・・な。自覚するのが遅いんだよ!」

「だから、同居は反対だったのよ・・・」

「お姉ちゃん?」

「花菜美は自己評価が低過ぎるから、じっくり攻めて欲しかったのに。青山ってば、吏(つかさ)さんと強引に同居決めちゃうし・・・」

「まぁ・・・その点は自覚してる。その報告と花菜美の所属についての相談に乗ってもらいたくて」

「そうだな・・・。同じ部署にはいられない、だろうからな。花菜美ちゃんは、どっか希望はあるの?」

東海林部長に聞かれて、私はちょっと思い巡らせてみる。

「・・・特には無いですが。私は事務が性に合ってるので・・・。一つ希望をするとしたら、専業主婦です」

「ちょっと、花菜美?」

「健吾さんと結婚するって決めてから、一晩考えて達した結論です」

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