愛され女子になりたくて
あれから後は、手強い資料を作成する事に没頭し、喉が乾いたので休憩ブースに行く。
アイスティーを買って、自販機の前にあるドーナツソファーに腰を下ろす。
ポンッとメッセージを受信する音がした。
慌ててスマホを開くと、同期で秘書課の安井祥子(やすいしょうこ)から、今夜のお誘いだった。
「仕事終わったら、ご飯行こ」
直ぐに了解のレスを返すと、アイスティーを飲む。
あの後、何度か青山さんの視線を感じたが、たぶん、気のせいだろう。
「あら、珍しいわね。休憩?」
「お姉ちゃん」
会社では、滅多に遭遇しないのに。
カフェラテを購入した姉は、私の隣に腰を下ろす。
肩下まで伸びたストレートの髪を右耳だけ出して、気だるそうにカフェラテを口に含む。
妹から見ても、色っぽい。
いつか、私も姉の様に大人な雰囲気が出せるのかな・・・。
「お姉ちゃん、今夜は祥子ちゃんとご飯食べて帰る事になった」
「ん、了解。私も今夜は同期会なのよ」
「良かった。後でLINEするつもりだったから会えてラッキー」
姉妹で同居してるので、家事分担してる。
朝食やお弁当を姉が担当し、私が夕食の担当だ。
姉は残業も多いし、滅多に一緒に食べる事は無いけど、用意しなくて良いなら助かる。
「我社の美人姉妹、発見」
姉の上司の、東海林(しょうじ)課長さん。
口も悪く、声も大きいから誤解されがちな人だけど、とっても優しい。
美人なのは、お姉ちゃんだけですから。
そういうこの人も、かなりのイケメン。
うちの会社は顔で選んでるのか?っていう位美男美女がゴロゴロ居る。
「佐藤妹、悪いが姉を借りてくよ」
「課長、私は物ではありません」
「堅いこと、言うなよ。急ぎの仕事だ」
二人でバタバタと、企画課に戻って行った。
今日、青山さんが午後内勤なのは、同期会があるからなのか・・・。