Violet Detective
「エキノコックスは、感染してから五年から十年は無症状で自覚症状はない。そのため、いつどのようにして感染したのか特定ができないんだ」

右京さんは、資料に目を通しながら言う。

「だからこそ、気になるんだ。エキノコックスでこの短期間に二人も死ぬなんて何か引っかかる……」

「……それは、エキノコックスに誰かが感染させたということですか?」

私は思ったことを素直に口にした。生物兵器として、エボラウイルスや天然痘ウイルスが軍で扱われているというのを聞いたことがある。かつて多くの人を死に導いたペストも兵器として開発が進められているそうだ。

「いや、それはまだわからない。ただその可能性もゼロではないということだ」

右京さんは資料から顔を上げ、私に微笑む。この調査を楽しんでいる、そうわかった。

「久々の事件で舞い上がってるんだよ」

東さんが三人分のコーヒーを用意しながら言う。私も探偵の助手としていてもいいことに驚きだ。

とりあえず、残りの資料に目を通す。
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