Violet Detective
日本茶を入れた湯のみを二つ持った京子が部屋に入ってくる。右京さんはすでに椅子に座って何事もなかったかのようにしていた。

「西園寺虎徹さんとはどういった関係ですか?」

私が訊ねると、京子は「別に特別な関係はありませんよ。あのパーティーに招待されたのも、私が売れてきたミステリー小説家だからであって特別なものでは……」と穏やかな表情で答える。

「では、虎徹の妻の朱美とは?朱美はあなたと同じ北海道出身で、おまけに高校と大学は同じだったんだろ?」

右京さんが京子を見つめる。京子はその鋭い目を避けるように、そっと目をそらした。

「……関わりは、ありません。真逆のタイプでしたし……」

「と言うと?」

右京さんの目はさらに鋭くなる。京子の肩がびくりと震えた。

「彼女はとても派手でした。校則だって平気で破るし、彼氏を取っ替え引っ替えしていました。誰かをいじめたり、万引きもしたことがあるとか……」

京子の目は、恐怖と悲しみで満ちている。過去に朱美と何かあったのだろうか。
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