Violet Detective
「それで?寺井のことは何か聞いたか?」

右京さんが訊ねる。その目はまだ冷たい。虎徹と倉本の関係はとっくに見透かしていたようだ。

「えっと……あ!寺井さんに、バーを経営していたのは本当かって訊いたんだ。そしたら本当だったみたいで、店の名前を教えてくれたよ」

そのバーの名前は、セレステ。京子の部屋にあった名刺に書いてあった名前だ。

「明日、そこに行ってみよう」

右京さんが野菜スープを口に入れる。野菜スープはトマトをたくさん入れたので、赤くなっている。

「そういえば、赤色ってアジアでは幸運や喜びの象徴で、ロシアでは革命や共産主義の象徴なんだって。寺井さんが教えてくれた」

トマトを口に入れながら、東さんが言った。

「寺井さんは美術の大学に通っていたから知っているんですね」

国によって色の持つ意味は違うんですか、と訊ねると東さんは「違うんだよ〜」と笑う。

「たとえば白は、西洋では純粋や平和という意味だけど、アジアでは死や不運という意味なんだ。ほら、日本でも死んだ人に白い着物を着せるでしょ?」

「たしかにそうですね……」
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