Violet Detective
そこには白衣を着た背の高い男性がいた。顔はまあ整っていると思う。しかし、人の荷物を勝手に漁って人の薬を見ている。

「これは、睡眠ホルモンに作用して眠りに導く薬だな。メラトニンは、体内時計の調節に関係していていて、睡眠と覚醒のリズムを調節している。体内時計を介することによって、睡眠と覚醒のリズムを整えて睡眠を促す」

違うか、と男性は微笑む。人に微笑まれて苛立ったのは生まれて初めてだわ。

「勝手に人の荷物を漁らないでください!プライバシーの侵害です!」

私はそう言い、男性の手から薬とかばんを取り戻す。すぐに東さんが男性を叱った。

「何やってるの!人の荷物を漁るって最低だ!!」

しかし、男性は悪びれる様子もなく、棚から資料を手にする。

「僕は、珍しい色の目を持つ人物が来ると聞いていた。だからどんな人間か興味を持っただけだ。君のその左目がそうなんだろう。東、お前の赤毛より珍しいかもしれないぞ」

男性は、私と東さんを交互に見ながら言う。東さんが「ごめんね」と私に謝ってきた。
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