Violet Detective
「まず、あなたの名前を教えてください。そして東さんの赤毛について説明してください」

私は咳払いをして、男性を見つめる。東さんの赤毛はそんなに珍しいのか、医学生として気になったのだ。

「……いいだろう。その代わり、後でその眼帯を外して目を見せてくれ」

男性は、右京桃李(うきょうとうり)と名乗った。右京さん曰く、自分は天才らしい。

「僕は、記憶力に優れている。忘れるということがない。僕はサヴァン症候群だからな」

その病名は、聞いたことがある。

「本人の知的能力と比べて驚異的な記憶力や高い計算能力を持った病気ですね」

「その通りだ。天才が解説をするのだから、きちんと聞けよ」

そう言って、右京さんは東さんを自分の横に立たせた。

「人の髪の毛の色は、ユーメラニンとフュオメラニンと呼ばれる化学物質による着色の結果により決まる。赤毛は全世界の人口の一%から二%しかいないんだ。ビタミンDの生成がしやすいため、髪が赤い」

「そうなんですか?」

東さんは「そうなんだ」と頷く。

「赤毛はスコットランドの人などに多いんだ。僕にはスコットランドの血が流れている。だから、髪が赤いんだ」
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