無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
そんな動作だけで途端に心臓がうるさくならこと、律くんに理解してほしい。
ただでさえ、この至近距離、恥ずかしいのに。
「うげぇ~っ。律がキモチワルイくらい甘いんだけど」
「.....車の端の席譲らなかったの、こーゆーことかよ」
げんなりと顔をしかめる駿くんに、呆れたような様子の冬哉くん。
そんな2人を一睨みした律くんは、ため息をつきながらネクタイの結び目を下に引っ張る。
緩められたネクタイの隙間から、微妙に見える綺麗な鎖骨。
.....だから、なんでそんなに色っぽいの。
ばっと顔を背けた私に、律くんは不思議そうな顔をする。
変なところ鈍いの、ずるい.....。
「晴。出してくれ」
「かしこまりました」
律くんの一言で、ゆっくりと発進する車。
触れそうで触れないこの距離に、早くついて.....と強く願ったのだった。