無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
男のひとの言ったことに、驚くわけでも、不思議がるわけでもなく、焦っている。
''あのひと''という言葉に、私よりも反応していたように見えた。
「ねえ、冬哉くん.....っ」
────なにを、知ってるの?
そう呟けば、冬哉くんはぐっと眉を寄せたあと、ゆっくりと目を細めた。
「......限界だな」
その声は、すこし弱々しくて、いつもの冬哉くんじゃないみたいで。
とうやくん、呼ぼうとして、口を閉じて、それの繰り返し。
そんな私に呆れたように苦笑すると、くい、と顎を動かす。
''行くぞ''───多分、そういう合図
こくん、と頷くと、大きい手のひらが頭に乗せられる。
そして、ぽん、ぽん、と子供をあやすような撫でられた。
すこしぎこちない手のひらに、慣れていないんだろうなあ、と笑ってしまう。
「.....ありがとう、冬哉くん」
ひんやりと冷たい手のひらとは裏腹に、胸の奥から柔らかい熱が生まれるような、温かい感覚がした。