無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる



ここに来たのは、あの日以来だ。


『未桜も桜蕾なんだよ』


ふと、やさしい笑顔が頭のなかに蘇る。


それだけで、さっきまでの不安がすこし薄れたような気がして。


....でも、やっぱり。



「(会いたい、なあ)」


なんとなく俯いていた顔を上げると、見覚えのあるものが視界に飛び込んできた。



「っ、」


あの黒いバイク─────律くんの、だ


律くんのバイクが、ここにあるということは......。



「....さっきの、撤回」


「っ、え?」


「こんなのしてても、顔にかいてある。
 .....''会いたい''って」


分厚いメガネを指差しながら、ふっと笑われる。


.....気のせいか、冬哉くんがすごく柔らかい雰囲気、というか、やさしい表情をしているような。



「ありがとう、冬哉くん.....っ」


「なんかい言うんだよ、それ」



倉庫に連れてこられたワケの中に、冬哉くんのやさしさが隠されているような気がしたの。


それを言ったら、自意識過剰、なんて思われるかもしれないね。


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