無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
恐怖とか、不安とか、そういう感情よりも.....、純粋に疑問だ。
元ヤクザが、わざわざ他人を雇ってでも狙っているのが────私?
私を狙うことに、なんの意味があるの?
「なんで、私なんだろう....」
「....うん。ほんとにそうでさ。香山なんていうオトコ、僕たちのなかで誰も面識ないし。みーちゃんも、そうでしょ?」
こくん、と頷いた。
当たり前だけど、今まで普通の人生を歩んできた私にとって、ヤクザとの面識、ましてや狙われる心当たりなんてあるわけがない。
「香山、どんだけ調べても顔写真が出てこなくて。さすが元ヤクザ、ってゆーか。情報のロックが固いんだよなあ」
「元.....ってことは、いまはヤクザじゃないの?」
さっきから気になっていた。
''榊組''の元組員で、旧姓が''榊''。
榊なんてそんなに多くいる名字でもないし、偶然である可能性は低いだろう。
そう考えると、すこしおかしい。
「榊達治は────榊組組長、榊 暢(のぶる)と愛人の間にできた子供なんだよ。
榊組が跡継ぎに困ってたとき、たまたま愛人との間に生まれたのが榊達治。途中までは長男として育てられてたみたいだけど....。本妻との間に子供が生まれてから、組のなかでけっこうひどい扱い受けてたらしーよ」