無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
その瞬間、閉じていたものがぱたりと突然ひらくように。
浮かんできたものは、見覚えがあった。
「お、とうさん.....の、へや」
「.....。お父さん、って未桜の?」
「そう....っ、二階の書斎の、机の上」
あれは、2年くらい前だろうか。
どういうキッカケだったかは覚えていないけど、私はお父さんを呼びに、奥の書斎へと入ったのだ。
そのとき、窓の隙間から強めの風が吹いて、なにかがふわりと落ちてきた。
『.....なんだろう、これ』
拾ったとき、たまたま一番上にあったもの。
まるで履歴書みたいに、写真と経歴のようなものが載っていた。
その、名前が────
「香山っ、.....達治」
そうだ、たしかに''香山達治''と記されていた。
写真もあったはず......だけど、なぜかモヤががかかったみたいに、思い出せない。
ひとつだけ、覚えているのは。
鎖骨には彫られていた、黒い竜────