無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
「え、ちょっとまって。みーちゃんのおとーさんの部屋に、香山の資料があったの?」
「....うん。資料、というか───
机の上の封筒は、弁護事務所から.....だった」
茶封筒の宛名には、しっかりと''弁護事務所''と記されていた。
....そしてその隣には、お父さんの名前があった。
「未桜のお父さんが、香山の調査を依頼した?」
シンとした沈黙を破ったのは、すこしの動揺を含んだ律くんの声。
「.....そう、だとおもう」
情報が錯乱して、頭が回らない。
頭のなかが''なぜ?''で埋め尽くされて、なにも考えられなくなる。
バクンバクン、くるしいくらいに暴れる心臓。
嫌な汗が背中を伝う感触が、ぞくりと冷たくて。
「っ、」
俯く私の手のひらに、再び温もりが重ねられた。
はっと顔を上げると、やさしく細められた瞳と視線が絡まる。
.....たったそれだけで、こんなに安心できるの。
なにも言わないまま、ぎゅうっと手を握ると、すこしびっくりしたように目を見開いた律くんが、ふっと口元を緩めて。
やさしく握られて、温もりが繋がる。