無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
普通よりすこし低めの、問いかけるみたいな声。
ズク、と胸の奥の方が変な風に疼いたのが分かった。
『泥で靴が汚れちゃったの、』
『じゃあ、これを使っていいよ』
渡された白いハンカチ。
受けとれば、にこりと感じのいい笑みを浮かべた男のひと。
─────これは、なんだろう
ほんとうに、ぱたり、と自然に浮かんできたものたちが、頭のなかを広がっていく。
今私がいるこの公園のなか、ひとりの女の子と男のひと。
これは、夢に見るすこし前のことだろうか。
『でも汚れちゃう....。ほんとに使ってもいいの?』
『いいよ。それ、きみにあげる』
『ありがとう....!あの、えと。お兄さんだあれ?』
『俺?俺は....、きみのお父さんのお友達、かな』
『え、おとうさんのお友達なの....?』
『そう。仲良くさせてもらってるよ、....とっても』
お父さんとお母さんに、知らないひとに話しかけられても答えちゃいけません、って言われているけど....、お父さんのお友達ならいいかな....?
真っ黒なパーカーに同じ色のズボン、キャップを深く被っている男のひとが、にこっと笑う。