無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
───その言葉が引き金みたいに、お兄さんの表情が変わった
やさしく解けていた皺に太い線が生まれて、鋭く細まった瞳。
びく、と心臓が震えて、無意識に顔が強ばる。
なにも言われていないのに、冷えきった雰囲気を纏うこのひとを、初めてこわいと思った。
『────俺は、お前が嫌いだよ』
『っ、おにいさん.....?』
突然変わった口調。
ゴミを見るような目で私を見て、ぐしゃぐしゃと髪を掻くこのひとは────だれ
逃げろ、という声がどこからか聞こえた気がした。
咄嗟に立ち上がって、このひとから離れようと地面を蹴る───ほんの一瞬前に、片腕を掴まれた。
拒もうと力をいれても、所詮子供と大人。
強い力で握られて、全く敵わない。
『いゃ....っ、はなしてっ』
''だれか助けて''、精一杯の声で叫んでも
周りに人の気配さえしないここじゃ、意味を持たない。
『こっちはさ、お前を連れてこいって言われてんだよ。''アオイミオ''さん』
このひと、私の名前を知ってて、私のことを知ってて、声をかけてきたんだ。
そのことを、今さらながらに理解する。