無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
◇◆
籠ったような話し声と、薄暗いライト。
すこしずつ戻ってくる意識のなかで感じとれるのは、それだけ。
すると、誰かが近づいてくる音がして、私の前で止まった。
「おい、起きろ」
肩を揺さぶられて、閉じている重い瞼をゆっくりと開く。
開かれた視界には、私を覗き込む男のひと。
明るい茶髪に細長い瞳、そして唇のピアス。
なんとなくソッチ側のひとなんだろう、と思った。
はんぶんくらい戻った意識のなかで、ぐるんと周りを見渡してみて、まず感じた違和感。
なんだか手と足が不自由だなと見てみたら、手錠がかかってる。
一見オモチャっぽいけど、多分ホンモノだ。
私は罪人か、とコレをつけたひとにツッコみたい。
多分、今私がいるのはどこかの倉庫。
さびれたドラム缶が何個か捨ててある入り口は、建て付けの悪そうな扉。
全体的に綺麗じゃないから、だいぶ昔に使われていた所だろう。
「へえ、泣き出すかと思ったけど案外平気そうじゃん」
「....そんなことない、です。怖いです」
「はは、だよなあ?マヌケな桜蕾の奴らのせいで拐われちまったんだもんなあ?」
わざと煽るような言い方で、にんやりと弧を描くように笑う目の前の男のひと.....、だれだろう、このひと。