無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
それもなんとか乗り気って、あとは不自然に思われないように''なにも知らない''ふりをするだけだった。
『────久しぶり』
.....実際に香山に会ったとき、私は平常心を保てるのか、と自分でも不安だった。
八年前に植え付けられた恐怖心にずっと囚われていて、香山に傷つけられた記憶すら私はなくしてしまったから。
『恐怖で声も出ないか?』
冷たく笑う香山の声と、もうひとつ、左から聴こえてきた、声。
『....未桜。俺がいる』
じんわりと胸の内側に染み込んでくるみたいな、やさしい低音。
八年前のあのときとは違う、''傍に居てくれるひとがいる''、安心感。
....律くんは、私に『未桜には敵わない』って言ったけど。
「(敵わないのは、私だよ....)」
律くんが傍にいてくれるなら、私は無敵だ、なんて....、ばかみたいかこと考えてしまうから。
『オレ後ろから押さえてるんで。香山さん先どーぞ』
....チャンスだ、と思った。