晴れ所により雷雨、所により告白【続編完結】
しかし、それはその場にいた安藤も同じで、

「いや、晶ちゃんは俺がもらう。
 俺、この間、初めて香水を買って
 みたんだ。
 ほら、いい匂いだろ?
 ムスクを付けるとモテるってネットに
 書いてあったからさ。」

と自分の香水を自慢してみせる。

俺は立場上、酒の席で立川を取り合う部下たちに混ざるわけにもいかず、苦笑いしながら眺めるしかなかった。
だけど、ただ目の前で部下の誰かに立川を攫われていくのを見てるのは忍びない。

「お前らが想うのは勝手だが、立川は彼氏が
 いるって言ってなかったか?」

と牽制してみる。

「そんなの、ずっと続くとは限りませんよ。
 奪っちゃえばいいんです。」

と安藤は当然のように口にする。

すると林は、

「安藤さんじゃ無理ですよ。
 その点、俺は普段から晶ちゃんとは仲良し
 ですからね。」

と安藤を煽る。

「お前ら、社内恋愛をするなとは言わない
 が、それが原因でギクシャクするような
 ことはするなよ。
 告白しました、振られました、仕事
 休みます、なんてのは、なしだからな。」

俺は釘を刺す。

まぁ、こいつらは酒の席では大きなことを言うものの、実際に彼氏持ちの立川に行動を起こせるほどの度胸はないと思うが。

だが、それは俺も同じで、ただ4年間見てることしかできなかった。

酒の席では必ず誰かが探りを入れるが、彼女は恥ずかしそうに幸せそうに、彼氏とうまくいってるって言うから。
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