晴れ所により雷雨、所により告白【続編完結】
未練
 それから、10日後、私が龍と一緒に会社を出ると、すっかり葉の落ちた銀杏の木に隠れるように智也が立っていた。

「龍…… 」

私がそれとなく視線で伝えると、龍は、私の手をしっかりと握り、私と街路樹の間に立ってくれた。

 私たちは、智也を目に止めながらも、何事もないかのように、無言で通り過ぎる。

 けれど……

「晶!」

智也が後ろから私の名を呼んだ。

私は、ゆっくりと振り返る。

「何?」

「俺、やっぱり、晶がいないとダメなんだ。
 晶、やり直そう?
 晶だって、俺のこと好きだっただろ?」

どの口がそんなこと言ってるの?
信じられない。

「悪いが、晶はすでに俺の妻だ。
 誰が何と言おうと、譲るつもりはない。
 今後一切、晶の前に現れるのは、やめて
 もらいたい。」

龍がきっぱりと断ってくれる。

私は、黙って龍の後ろに隠れていた。

「あんたは、俺に振られた晶の避難場所で
 しかない。
 俺が戻れば用無しだよ。
 そうだろ、晶?」

この人は、何を言ってるんだろう?

そうじゃないことは、あの夏の日に伝えたはずなのに。

「そう思いたい気持ちは分からないでも
 ないが、晶はもう君のことを何とも思って
 いない。
 むしろ、親友の雪菜さんを傷つけた事で
 怒りすら覚えている。
 これ以上、晶に嫌われたくなければ、
 もう晶の前に現れないことだ。」

私は、龍のコートの背をギュッと握った。

「智也、私、お願いしたよね。
 雪菜を泣かせないでって。
 何で、雪菜だけを愛してあげなかったの?
 雪菜と晴空ちゃんを幸せにしてあげて
 欲しかったのに、なんで… 」
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