夜明け3秒前
それなのに、2人にこうして心配してもらっているのが辛くて。
胸が痛くなるくらい申し訳なくて。


最初は、心の底から幸せだったはずなのに、どんどん崩れていく。
どうしたらいいのかわからない。

結局、こんな自分にはもったいない場所だってことなのかな。
でも帰るのは怖い。


こんなに優しい世界を知ってしまったのに、私はまたあの家でやっていけるのかな。
だけど、本当の居場所はあそこだから。


私の家族はあの人たちだから。
それなのに嫌だ、と思ってしまう自分に腹が立って、嫌いになって、ずぶずぶと沈んでいく。


「凛月!」
「……えっ、どうしたの流川くん」


急に隣で名前を呼ばれて、ビクッと肩が揺れる。


「何回呼んでも反応ないから……どうしたの?」


そう言われて、またぼーっとしてしまっていたことに気づく。
悟られたくなくて誤魔化すように笑う。


「夏休み終わるの寂しいなあって考えてた、ごめんね心配かけて」


ごちそうさまでした、と手を合わせて逃げるように席を立つ。


「今日は部屋でのんびりします」


食器を洗うと、それだけを言って部屋へ戻った。
このまま流川くんのそばにいるとまずいと思ったから。

心配されるのは慣れていない。
麻妃もずっと私のことを気にかけてくれているけれど、こういうときどうしたらいいかわからない。

だけどもちろん嬉しいし、2人は心が温かくなる言葉をたくさんくれる。
でも、それがふとたまに怖くなってしまう。
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