夜明け3秒前
コンコンコン、と控えめにドアをノックする音で目が覚める。


「凛月、まだ寝てる?」


声は小さいけれど、しっかり聞こえた。
時計を見るともう夕方の5時で、熟睡してしまっていたことに気づく。


慌ててベッドから体を起こす。
あれ……私、部屋に戻ってからベッドに寝転んだっけ。


疑問に思いながらも、ドアを開けた。


「ごめんね流川くん、私ずっと寝てたみたいで……」

「全然いいよ。悪い、起こしちゃったな」


申し訳なさそうに謝る彼に、大丈夫だよと答える。


「よく眠れた?」


聞かれてドキッとした。
今朝のことを思い出して、勝手に気まずくなる。


「……うん」


夢を見ることもなく、本当にぐっすり眠れた。
少しだけ体がだるいけれど。

流川くんは安心したように微笑んだ。
その表情を見るのが久しぶりな気がして、なんとも言えない気持ちになる。


「そっか、よかった。ご飯食べる?」
「……ううん」


いつもなら絶対に「うん」と答えていたけれど、首を振った。
何か言われるかなと思ったけれど、彼はわかったと言うだけで何も聞いてこない。


「じゃあ、お風呂入る?」
「うん」


正直動くのもだるいけれど、お風呂は入らないと。


「わかった。お湯入れたところだから、ゆっくり入っておいで」

「ありがとう」


それだけ言うと、彼は1階へと降りていく。
いつもは近かった背中が今はなんだか遠くに感じて、少し寂しかった。
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