夜明け3秒前
お風呂から上がると流川くんにとても心配されて、部屋で安静にして待っててと言われてしまった。

どうやら長時間浸かったことでのぼせてしまったらしい。


カーテンから入ってくる風が涼しくて気持ちいい。
ベッドに腰掛けて言われた通り待っていると、彼が帰ってきた。


トレーにペットボトルのお水と、マグカップが2つ乗っている。
コーンスープの匂い?


「水飲んで、冷やして」
「うん……ありがとう」


渡されたお水を飲むと、胃まで冷たいものが落ちるのを感じた。
生き返る、そんな気がする。


「……顔色、悪いな」


彼はトレーをテーブルに置くと、私の隣にそっと腰掛ける。
頬に優しく触れられて思わず体に力が入り、ぎゅっと目を閉じてしまう。


あ、違う、そう思ってすぐに目を開くと、ぱちっと目が合った。
「ごめん」と謝られて、私も同じように謝る。


「お風呂入る前は、よくなったなと思ってたのに……ごめん、もっと早く声かけるべきだった」


辛そうな、申し訳なさそうな表情。
彼にこんな顔をさせているのが自分だと思うと、私まで苦しくなる。


「……ううん。流川くんは悪くないよ。声かけてくれてありがとう」

「……うん」


そう言っても、彼は納得しないだろうとわかっていた。
でも言わない選択肢はない。


彼の冷たい手が、手首に触れてドキリとする。


「……赤くなってる」


視線を落とすと、手で掴まれたような形が手首に赤く残っていた。
きっと、私の手の大きさぴったりの。


「……痛かっただろ」
「……うん」
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