夜明け3秒前
自分でもおかしいことを言ってるなと思った。

でも痛かったのは、痛いのは本当だ。
身体も、心も。

彼は何も聞いてこない。


気づいているのかな。
こんな変なやつだってわかって、もう嫌われちゃったかな。

私だって自分のこと嫌いだけれど。
彼には嫌われたくないって、好かれていたいなんて思ってしまう。


「凛月、旅行楽しい?」
「え……」


前と同じ質問。
だけど前とは違って、楽しいと答えることができなかった。


彼は聞く前からわかっていたのか、目を伏せる。


「最近全然元気ないし、顔色悪いし、ご飯食べるのも辛そうだし。それに、よくぼーっとしてる」

「……」


流川くんはゆっくりと私の方を見る。
瞳は心配の色が滲んでいて、なぜかそらせない。


「……旅行に連れてこない方がよかった?」
「っ、ちが、そんなことない!」


久しぶりに大きな声を出した。
少し声がガラガラで情けなかったけれど。


「じゃあ話して」

「え?」

「凛月が悩んでること全部。話したくないことだってわかってる。自分勝手でごめん。でも、話してほしい。力になりたいんだ」


流川くんの表情は、今まで見たことがないくらい真剣だった。
私のことを想ってくれているんだと、嫌でもわかるくらいに。
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