夜明け3秒前
「それに、自分が辛い思いしてるときに気にかけてもらえるのって嬉しいし……それが大切な人ならなおさら」


もちろん、長く続くと嫌になったり、逆に苦しくなることはある。
だけど嬉しい気持ちがないと言ったら噓になってしまう。


「……こんな私だって、家族から連絡が来たら嬉しいよ」


えへへ、と笑う。
あの人たちから逃げたくなるほど辛い思いをしてきた。

彼女のことたちを大声で大好きだと言えるほど、私の心は広くない。
でも、少しでも好きだという気持ちがないのかと聞かれると、頷くことはできない。

もしかしたらと期待して、こうなったらいいのにと願ってしまうくらいには。


流川くんは私がどういう意味で言ったのか察したのかな。
悲しそうに力なく笑って、そっかと呟いた。


「それにね、これだけお姉さんのことを大切に想ってる流川くんを、お姉さんが嫌ったりするはずないよ」


力強く言い切った。
自分のことを話そうとすると怖くなって震えて、言葉が何も浮かんでこなかったのに。


流川くんが目を見張る。
今彼はどう思っているんだろう。


「……って、全部お姉さんに聞いてみないと、本当はどうかなんてわからないんだけどね」


あはは、と口からこぼれ出る。
これってちゃんと彼の力になれているんだろうか。

急に不安になってくる。
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