夜明け3秒前
「凛月ってすげー優しいよな」
「え!?」
「俺の欲しい言葉、全部くれるんだもん」


彼は嬉しそうに笑った。
霧が晴れたみたいに、晴れやかに。

その笑顔を見ることができて私まで嬉しくなる。


「やっぱり、どこかで願ってたんだよな。こう言って励ましてくれる人がいたらいいのにって」


彼の言葉に頷く。
そういうときって、きっと自分が自覚していないだけでたくさんある。


「なんかすげー元気出た。自分が望んでた言葉もらって、なんてちょっとわがままだけどさ」

「ううん、私が思ったことだから。元気出たならよかったよ」


不安が消えていく。
彼の笑顔を見ていると、私まで救われたような気持になるのはなぜだろう。


「……じゃあ、お姉さんに連絡してみる?」


ちらっと隣を見てみる。
流川くんは何とも言えない顔をしていた。


「……んー、やっぱそれはちょっと怖いかも」


また自嘲の笑みを浮かべる。
その顔を見ていると、やっぱり私まで辛くなるから。


「怖いなら、私そばにいるよ」


身を乗り出して、そんなことを言っていた。
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