夜明け3秒前
「……上手く言えないけど、俺は凛月のことすげー好きだし、助けられたし、たくさん笑顔にさせてもらった」


そんなの、私のセリフなのに。
流川くんと目が合う。


「……だから、生まれてきてくれてありがとう。凛月に出会えてよかった」


彼が優しく微笑む。
驚いて、本当にびっくりして、目がそらせない。


「って、ちょっとかっこつけすぎ、た……」


恥ずかしそうに笑うけれど、私の顔を見て動きが止まる。
そっと頬に触れられて、自分が泣いていることに気がついた。


ぽた、ぽた、と勝手に落ちていく。
今までずっと、何年も泣けなかったのに。


「……ご、ごめ」


止めたいのに止まらない。
それどころか、止めないとと思うたびに涙が出てくる。


「う、どうしよう……止まらない」


嬉しいのに悲しかった。
私もきっと、ずっとこの言葉がほしかったんだ。

産んでくれた実の親に否定され続けた。
生きる意味なんてなくて、辛い思いするくらいなら生まれてこなければよかったなんて思った。


だけど。


「……凛月」
「涙って、どうやって止めるの……?」


目の前の彼は、優しくて温かい言葉をかけてくれるから。
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