夜明け3秒前
「お邪魔します……」


左手でカゴを抱えて、右手でドアを開ける。
黒色で統一された綺麗な部屋。

だけど、机の上に読みかけの本があったり、ベッドの上にパーカーが置いてあったりして生活感がある。
私が流川くんの部屋に入ったのは初めてだ。

流川くんが私の部屋に来ることはあるけれど……
なんだか不思議な気持ちだなあ。


机の横にカゴをそっと置く。
すると、小さめの写真立てがあるのに気づいた。

思わず視線がそちらに向く。


「わ、綺麗な人……」


言葉が出てしまうくらい美しい人が写っていた。
綺麗な恰好をした女性が2人、仲が良さそうに笑っている。


あれ、この右側の人見覚えがある……
そうだ、女装をした流川くんだ……!

今よりちょっと幼いけれど間違いない。
それじゃあ、このとても似た人は……


お姉さん、かな。


優しくて、こんなに綺麗でかわいくて、素敵な人。
あれから流川くんは、お姉さんのことを何も話さない。

連絡が返ってきたのかどうかとか、いろいろ気になってしまうけれど、無理やり聞くわけにはいかないし……


うーん、と考えていると、階段を上ってくる足音が聞こえてくる。
絶対流川くんだ……!

ど、どうしよう……!と考えているうちに、扉がバンっとすごい勢いで開いた。
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