夜明け3秒前
「凛月!」


走って帰ってきたのか、彼は息が上がっていた。


「流川くん!ご、ごめんね、勝手に部屋に入って……!」

「え?ああ、いいよ謝らないで。じいちゃんから聞いたよ、カゴありがとう」


逆にお礼を言われてしまい、ううん、と首を振る。


「ってそうじゃなくて!さっき姉ちゃんから返事がきたんだ!」

「え、ほんと!?」


流川くんはすごく嬉しそうに頷く。
お姉さんとはどうなったんだろうと今心配していたところだし、ナイスタイミングだ。
私もつられて幸せな気持ちになる。


「凛月のおかげ。ほんとありがとう!」
「ううん!私はそばにいただけだし、流川くんが頑張ったからだよ!」


よかった、ほんとによかった……!
きっとこれからもいろいろあるだろうけれど、2人なら乗り越えていくんだろうな。

それが嬉しくて、少し羨ましい。
わ、ダメだ、なんか泣いちゃいそう……!


「凛月?」


ぐっとこらえていると、流川くんが近づいてきた。
泣いているのを見られたらまた心配させてしまう……!

それに今はあまり近寄られるとドキドキして緊張しちゃうし……!
彼から距離をとろうとして後ずさる。


するとコツン、と何かが足に引っかかった。


「わっ!?」


気づいたときには後ろへと重心が偏っていた。
このままじゃ転んじゃう……!


「凛月!」
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