夜明け3秒前
「ごめんごめん。オレ怪しいやつじゃないから、そんな顔しないでよ。あー、そうだな……千那の友達って言えばいいかな」

「え?流川くんの?」


驚いて聞き返すと、うんと頷かれた。
流川くんってほんとに顔が広いんだなあ……


「君さ、会場入ってきたとき千那と一緒にいたでしょ。付き合ってんの?」

「えっ!?ち、違います付き合ってません!」


ブンブンブンと首を振る。
この旅行で何回か聞かれたけれどやっぱり慣れない。


焦りと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
こういうときどうしたらいいかわからない。


「へーえ?そんな風には見えなかったけど……」


男性は意味ありげな表情でぶつぶつと呟いている。
なんだろう……やっぱりちょっと怖い。


そんな顔で何か考え込んでいると思ったら、急にぱっと明るくなる。


「じゃあ君、千那のこと好きなの?」
「……え?」


問いかけにびっくりして、まるで時が止まったような感覚に襲われる。
私が、流川くんのことを……好き?


彼が尋ねた『好き』の意味が、友情のものではないことくらいわかる。
つまり、つまり……そういうことで。


何も答えられない。
だって、今までそんなこと考えたことなかったから。

でも、最近流川くんと目が合うだけでドキドキするのは……
前よりも仲良くなったはずなのに、急に話すことも緊張するようになったのは……

触れられて嬉しいのに、切ない気持ちになったのは、全部。
もしかして、私が流川くんをー
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