夜明け3秒前
「……凛月、変わったね。強くなった」
「え?そ、そうかな」


確かに流川くんたちのおかげで元気になったし、考え方も変わって、前よりは成長できてるかな……なんて思っているけれど。

流川くんが切なそうに目を細めるから、胸がキュッと苦しくなる。


「……俺は逆に弱くなったかも」
「えっ、そんなことないと思うけど……」


流川くんはそっと視線を下に落とす。
元気がなさそうな彼を慰めたいと思うけれど、彼がどうしてそう思うのかがわからなくて月並みな言葉で否定することしかできない。


「……夏休みももう終わるな」

「う、うん。そうだね」

「このコテージで暮らすのも、あとちょっとだな」

「そうだね、もう一週間切っちゃったし……」


こくこくと相槌を打ちながら話を聞いていると、流川くんがふと顔を上げる。


「……寂しいって思ってるの、俺だけ?」
「え?」


その声はまるで小さな子どもが甘えているみたいだった。
そんな声、初めて聞いた……


彼の新しい一面を見た気がして嬉しいのと同時に、きゅーっと切なくなる。
それなのに熱を帯びた瞳で見つめられるから、心臓はドキドキして大忙しだ。


「え、えっと……清さんと離れちゃうの寂しいよね!でも流川くんは家に帰ったらお姉さんが待ってるし、きっと……」


大丈夫だよ、と最後まで言い切ることはできなかった。
流川くんがいつものように微笑むこともなく、私の方をじっと見ているから。
< 153 / 192 >

この作品をシェア

pagetop