夜明け3秒前



「ええっと……服は入れた、歯ブラシも入れた、あとは……」


忘れ物はないか確認しながらキャリーケースに荷物を詰めていく。
行きのときは早く逃げたい気持ちでいっぱいだったけれど、それももう懐かしく感じてしまうから不思議だ。


よし、入れ忘れはないよね。
最後の確認を終えると、コンコンコンと部屋の扉をノックする音が響く。


返事をすると流川くんが顔をのぞかせた。


「凛月、荷物まとめ終わった?」

「うん、終わったところだよ。流川くんは?」

「俺もさっき終わった。じいちゃんが朝ごはんにしようって」

「わかった、ありがとう!」


立ち上がって流川くんと一緒に一階へ下りる。
ダイニングへ行くと、テーブルには朝ごはんとは思えないほど豪華な食事が用意されていた。


「す、すごい……!」

「昨日も豪勢だったんだから今日はいいって言ったのに」

「ははっ、いいじゃないか。今日が最後なんだから遠慮しないで」


さあほら座った座った、と楽しそうな清さんに押されて食卓に着く。
目玉焼きにポテトサラダ、お味噌汁、焼き鮭……


イチゴまで用意されていて驚く。
こ、これ全部食べられるかな……?


でもやっぱり清さんの作るご飯は美味しそうだ。
今日で食べるのが最後だと思うとすごく寂しいな……


「いただきます」


いつもより心を込めて挨拶する。
ぱく、と一口食べたポテトサラダはほんのり甘くて美味しい。
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