夜明け3秒前
悩んで清さんのご飯を美味しく食べられなかった時期が、今更になって胸にのしかかる。
だからその分も大事に大事に味わって飲み込んだ。


「……美味しいです」

「それはよかったよ。最後だと思うと張り切ってしまってね」


清さんは朗らかに笑って、私たちの方を見る。


「やっぱり誰かと食べるご飯が一番美味しいからね」


表情は明るいのにその言葉はどこか切なかった。
だけど、清さんがそういう風に思ってくれていたことが嬉しい。


「それにしても張り切りすぎじゃない?朝ごはんだよ?」


流川くんはツッコミながらも嬉しそうに微笑む。


「いやあ、作る途中で気づいたんだけどね。やっぱりいいかと思ってな」

「じいちゃんって割と適当なとこあるよな」


2人が楽しそうに笑うから、私もつられて笑ってしまう。
こんな幸せな食卓、いつかあの家でもつくれるかな。


お母さんがこういう風に笑って、お父さんの機嫌もよくて……
莉子や光輝、帰ってくることが少ないお兄ちゃんも、私も入れて。


もし、もしも実現できたなら……
それはすごく幸せな思い出になるんだろうなあ、なんて考えながらご飯を食べた。
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