夜明け3秒前
20分くらい歩いて、電車に乗って、流川くんの隣に座る。
行きと違って肩が触れてしまう距離にドキドキして、電車の時間が長く感じてしまう。


ど、どうしよう……!
意識しないようにするには一体どうすればいいんだろう……


さっきまでの温かい気持ちがすっ飛んで、今は顔が熱いのをどうすればいいか真剣に考えていた。

心臓がばくばくするのが止まらなくて困り果て、流川くんには悪いけれどいっそ寝てしまえばいいんじゃないかと思ったとき。


「凛月、緊張してる?」


隣からそんな声が聞こえてきて心臓が跳ねた。


「え、な、なんでわかるの……!?」


びっくりしすぎて誤魔化すこともせず、逆に彼に質問してしまう。


「やっぱり。さっきから顔赤いし、ずっときょろきょろしてるから」


嘘……!
私そんなにわかりやすかったかな!?


流川くんは私がそう考えていることもお見通しなのか、ははっと軽快に笑った。


「俺が隣で気になるなら、別の席に座ろうか?」
「えっ」


彼の声はとても優しかった。
私が勝手に意識しているのが悪いのに、「うん」ととても言いやすい雰囲気で、彼の人のよさが現れているなと思う。

でも、別々で座るのは寂しいし、こんな機会がまたあるなんてわからないし……


「……ううん。隣がいい」


そう言うと、彼は驚いた表情をしたあとに微笑んで「わかった」と答えてくれる。


「……ごめんね、わがまま言って……」
「全然いいよ、嬉しいから」


にこにこと楽しそうに笑う流川くんは、やっぱり綺麗でかっこよくて。
心臓がドキドキするのを抑えることができないまま電車に揺られていた。
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